芥川賞や直木賞という言葉は知っていても、どのような賞なのか詳しくわかっていない人もいるのではないでしょうか?
賞を受賞した方や関係者の方々に失礼なのは重々承知のうえで暴露しますが、私も最近まで”とにかくすごい賞”くらいの認識でした…。
この記事では、芥川賞や直木賞についての解説をし、他の有名作家の名前が入っている賞や本選びの参考になるようなユニーク性のある賞をいくつか紹介していきます。
芥川賞とは
芥川賞という名前で呼ばれることが多いですが、かの有名な作家の名がそのまま入った「芥川龍之介(あくたがわりゅうのすけ)賞」というのが正式名称です。
芥川龍之介と言えば、「羅生門」や「鼻」「蜘蛛の糸」など後世に残る名作をいくつも残した作家ですよね。
この賞は、菊池寛が発案し、1935年(昭和10年)にはじまりました。
現在(令和5年)、主催は日本文学振興会が主催していますが、実質の運営は文藝春秋がしています。
芥川賞は、もっとも優れた短編もしくは中編の純文学作品を書いた新人作家に授与される賞です。
また、受賞作品は1年に2回の選考がありますが、それぞれ過去半年間に刊行された文芸雑誌の掲載作品から選ばれるため、雑誌の新人賞をとるなどして掲載されなければ芥川賞の受賞は叶いません。
直木賞とは
直木賞という名前で呼ばれることが多いですが、「直木三十五(なおき さんじゅうご)賞」というのが正式名称です。
この賞に名前が採用された「直木三十五」という作家(この名はペンネームであり、本名は植村宗一)は、代表作として「南国太平記」を残しています。
直木賞は、直木三十五が大衆文学の歴史を変える貢献をした人物であると讃えるとともに、彼を超える作家を見つけることを目的として、1935年に創設されました。
創設者は芥川賞と同じく”菊池寛”。
毎年、2つの賞の発表が同時に行われますが、創設者が同じだったことが関係していると思われます。
直木賞を受賞するためには、中堅作家であること、大衆小説であること、中編〜長編の作品であること、単行本として発刊されていること、という条件があります。
受賞した時の賞品
芥川賞や直木賞を受賞すると、正賞には受賞した人の名前と受賞した日付が入った懐中時計、そして副賞として100万円が贈られます。
なぜ正賞に懐中時計が採用されているのか不思議に思う人もいるのではないでしょうか。
これは、賞が創設された時代に、金銭的な余裕がなく生活に苦しんでいた作家がいたという背景が関係しています。
その頃、懐中時計はとても価値の高いものとされていたため、生活に困った”もしも”の時にお金へと換えることができるという配慮から正賞として懐中時計が贈られるようになったといわれています。
他にもある!作家の名前が入った賞
芥川龍之介と直木、の他にも、作家の名前が採用された文学賞はいくつもあります。
今回は、そのなかでも5つの文学賞を紹介します。
星新一賞
SF作家である星新一の名が入ったこの賞は、日本経済新聞社が主催する短編文学賞です。
一般部門とジュニア部門の2つがあり、一般部門では「理系的発想からうまれた作品」であることが条件となっています。
星新一賞(一般部門)を受賞すると、正賞として星新一のトレードマーク”ホシヅル”が採用された「ホシヅルトロフィー」、副賞として100万円が贈られるようです。
谷崎潤一郎賞
『細雪』や『痴人の愛』、『春琴抄』といった代表作を残した谷崎潤一郎の名が入ったこの賞は、ジャンルに決まりがなく、「時代を代表する優れた小説・戯曲」というのが条件です。
受賞すると、正賞として時計、副賞として100万円が贈られるようです。
三島由紀夫賞
三島由紀夫は、『金閣寺』や『仮面の告白』などの代表作を残しています。
高校の教科書で『美神』や『小説とは何か』といった作品を見て、三島由紀夫を知ったという人もいるかもしれません。
そんな三島由紀夫の名が入ったこの賞は、「文学の前途を拓く新鋭の作品」に贈られる賞となっています。
対象となるのは小説、評論、詩歌、戯曲と幅広く、斬新な作品が選ばれやすい傾向にあるようです。
受賞すると、記念品のほか副賞100万円が贈られます。
江戸川乱歩賞
江戸川乱歩は『怪人二十面相』をはじめとした多くの小説を残した推理作家です。
そんな江戸川乱歩の名が入ったこの賞は、日本推理作家協会によって制定されたもので、なんと制定のための基金は江戸川乱歩が寄付をしています。
授与の対象となるのは、推理小説。
受賞すると、正賞として江戸川乱歩像、副賞として賞金500万円が贈られます。(1人が受賞した場合)
太宰治賞
太宰治賞は、純文学の小説が選ばれる公募型の新人賞となっています。
この賞は、1964年に筑摩書房が創設したのがはじまりであったが、第14回を迎えた1978年で休止。
その後、1998年に太宰治の没後50周年をきっかけに、筑摩書房と東京都三鷹市が共同主催という形をとり復活しました。
太宰治賞を受賞すると、正賞として記念品、副賞として100万円が贈られます。
読みたい本探しの参考に!面白文学賞4選
ここでは、ユニーク性のある面白い文学賞を4つ紹介していきます。
書店で目にすることも多くなってきたものもあるので「〇〇賞はこういうものだったのか!」と覚えていただいて、この記事を読んでくれた方の『新たな本選びの切り口』になれば幸いです。
本屋大賞
本屋大賞は、新刊を扱う書店に所属している書店員の投票によって選ばれる賞です。
2004年からスタートしており、比較的新しい賞になっています。
日々、本を扱っている書店員によって選ばれた本なら…と、興味が湧いてくるのではないでしょうか。
2024年には「成瀬は天下を取りにいく」、2023年には「汝、星のごとく」が受賞しています。
本屋大賞の受賞作品が決まった頃、書店は「本屋大賞フェア」で賑わいます。
素敵な本との出会いも果たせるかもしれないので、ぜひ書店に足を運んでみてください。
『このミステリーがすごい!』大賞
略して『このミス』とも呼ばれる『このミステリーがすごい!』大賞は、その名の通りミステリー小説を募集しています。
ミステリー要素を含んでいれば、時代小説やSF小説でもOKという間口の広い賞です。
大賞を受賞すると1200万円が、文庫グランプリに選ばれれば200万円が贈られます。
女による女のためのR-18文学賞
女による女のためのR-18文学賞は、応募者・選考委員・下読みをする編集者、全て女性のみというユニークな公募型の新人賞です。
創設された当初、”性”というテーマを取り扱った小説が対象となっていましたが、第11回からは「女性ならではの感性を生かした小説」、第23回の募集要項では「書き手の感性を生かした小説」となりました。
主催しているのは新潮社です。
ネット小説大賞
ネット小説大賞とは、小説投稿サイト「小説家になろう」で開催されるコンテストです。
日本国内では最大規模だとされていて、2023年の応募では1万を超える作品が集まったといいます。
ネット小説大賞は、文字数やジャンルの制限がなく、完成させる意思があれば未完成の状態でも応募が可能という、応募のハードルが低いコンテストです。
受賞作品がアニメ化やドラマ化した実績も多いので、注目の集まっている賞だといえますね。
まとめ
ニュースなどで取りあげられることが多く、よく耳にする芥川賞や直木賞について解説しましたが、いかがでしたか?
今回、親しみやすいユニークな賞や作家の名前が入った賞をいくつか紹介しましたが、これらはほんの一部です。
賞の背景を知れば、本選びの新たな切り口になると思っています。
これを読んだ貴方に、素敵な一冊との出会いがありますように。